顎を骨折して入院して手術した

なにこれ

フォロワーに説明したかったので書いた。ネタとして消化してもらえたら嬉しいです。専門家ではないので医学的に誤った記述があるかもしれません。多少生々しい表現があるかもしれないので苦手な人は読まないでください。

事故

4/1の朝のことでした。所属している研究室の春休みは3/31で終わりだったので、その日から私は大学へ登学することになっていました。 晴れていたので最寄り駅まで自転車で出ようと漕ぎ始めて数十秒、体が地面に打ち付けられました。 とっさに何が起こったのか全く理解できなかったのですが、体を起こしてメガネを拾ってかけてみると(衝撃でメガネが飛んでいた)地面と衣類にポタポタと血がたれていました。

さて、よく整備された歩道では緩衝帯として車道との間に樹木が植えられていることがあります。樹木を植えるためそこだけアスファルトが剥がされ、土になっている場合もあるかと思います。 自宅前の歩道はまさにそのような形態なのですが、土の面がアスファルトの面と面一ではなく、一段落ちていました。

どうやら私は自転車の前輪を土とアスファルトの段差に引っ掛けて、地面に下顎を打ち付けながら顔から右前向きに伸びるように転倒したようでした。

転倒直後は驚いて興奮していたせいか大して痛みを感じませんでした。下顎と右手のひらと右頬の上から出血してることと歯の噛み合わせがおかしいことがわかったのですが、そのときはあーあ転んじゃった単独事故でよかった歯は折れちゃったかなぐらいに思ってとりあえず自宅に引き返すことにしました。自宅からわずか数十mのところで転倒したので。

これは自宅に戻って血を流しながらしたツイート

受診・診断

受診

私は実家住まいで、その日は自宅に戻ると母がいたのですが、歯がおかしいといったら開いている口腔外科を探せと言ってくれました。 かかりつけの歯科などなかったので、血まみれの手でネットを探したり#7119に電話をかけたりして、紹介なしの外来を見てくれる口腔外科をなんとか見つけました。地元の公立の総合病院です。木曜は休診の病院が多いので探すのが大変でした。1人だったら面倒になって救急車呼んでたかもしれない。

昼前に病院まで送ってもらい、口腔外科の診察を受けました。診察前の時点では歯や顎より出血した右手のひらと右頬の上が痛いなと感じていたのですが、顔のレントゲンを撮った時、像を見たであろう検査技師さんに顔の左痛くないですかといわれたので:thinking face:をしました。

診断

先生から左の顎の骨が折れてます、入院して手術することになるので付添いの方がいるのであれば説明するので呼んでくださいと言われて驚きました。噛み合わせがおかしいのは歯が折れたからではなくて、顎が折れたからなんだとわかりました。普通に歩けるし翌日から研究室に復帰しようなどと思ってたのでおおごとになってマジかーという感じでした。

診断としては左下顎関節突起骨折、顎が〜とTwitterでは言っていましたが折れたのは顎の付け根でちょうど画像のCondyleとRamusの間の線のあたりの部分です。(画像は右顎なので実際は反対側が折れている。)

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"Mandbular fractures" by Frank Gaillard is licenced under CC BY-SA 3.0

治療の流れ

説明を受けて同意し、行われることになった治療の流れはこうです。

  1. 全身麻酔をかけて左顎の下を5cmほど切開し、筋肉等の組織を骨から剥離し骨折部を露出させる。酸素マスクは施術の邪魔なので手術中の全身麻酔は鼻から気管に挿管したチューブを用いて行う。
  2. 噛み合わせが正常になるよう下顎の位置を合わせ、噛み合わせがずれないようにワイヤーで歯が開かない状態に固定(顎間固定)。
  3. 骨折部にチタン製のプレートをあてがい、ネジで骨に固定。
  4. 切開部を縫合。(ここまで手術)
  5. 顎間固定を解除。(術後数日)
  6. 再び手術して埋め込んだプレートを撤去。(術後1年〜)

手術後の顎間固定中は口から栄養を摂ることができず、また点滴のみでは栄養が不足するため鼻から胃にチューブを挿入し、そこに栄養剤(食品)を流し込むことで食事の代わりとすることになりました。

治療方法について先生からとても丁寧に説明を受けインフォームド・コンセントを感じましたが、顔に人工物を入れること、鼻に挿管すること、全身麻酔をかけること、術後は数日は顔が腫れて痛いこと、などに不安を覚えました。

コロナが関係しているかどうかはよくわかりませんが、入院病棟に空きがないため即日入院手術とはならず、5日後の4/6から入院、4/7に手術ということになりました。骨は自然に固まってしまうので2週間以内に手術しないとまずい、という話もされました。退院のタイミングは骨がいい感じに固まって顎間固定が外れたら、です。入院期間はおよそ1週間になるだろうと伝えられました。

1日目その他のこと

顎の下は切れていて傷も大きかったので縫ってもらいました。

2日目〜入院まで

2日目

翌日は同じ病院に新型コロナウィルスのPCR検査を受けに行きました。全身麻酔を伴う手術をする患者は全員受ける必要があると言われたんですけどその論理は正直よくわからない。陽性だと入院できなくなるらしいです。鼻に突っ込まれて咽頭を拭われるのは痛かった。このあとの鼻チューブはこんなんじゃないんだろうなと思って震えました。 それから手術、治療について再度より詳しい説明を受け、同意書を書きました。

3〜5日目

食べる、話す以外の行動に問題がなく、普通に歩けるので土日はバイトに行きました。入院中のシフト変わってくれっていうお願いもしたかったしね。 噛み合わせが合わないのと口が大きく開かないのでうまく食べられませんでした。ふやかしたグラノーラとかウィダーインゼリーなど噛まなくても良いものを飲み込んで過ごした。

あとは入院の準備とかした。

入院

入院1日目(6日目)

入院は午後からでしたが午前に麻酔科医の先生の診察があって、全身麻酔のリスクに関して説明を受け同意書を書きました。手術には麻酔科医も立ち会ってくれて麻酔下での呼吸とか体温とか色々見ててくれるらしい。

午後から入院になりました。翌15:00から手術なので夕食後は経口補水液*1とアルジネードウォーター*2しか口に入れられなくなりました。胃の中にものがある状態で全身麻酔をかけると危ないからね、しょうがないね。お腹すきました。

入院2日目(7日目)(手術日)

手術するのは人生で初めてだったので緊張して朝から結構ソワソワしてました。

手術室には歩いて入室し、手術台に自分で上がって仰向けに寝っ転がりました。上で全身麻酔は鼻管から、と書いたのですが一度意識を失うまでは一般的にイメージされる感じのマスクを付けてガスを吸いました。麻酔がかかっていない状態で鼻に挿管するのはたぶん難しいのだと思います。ゆっくり深呼吸してくださいと言われるのでそうするのですがたぶん10回も吸わないうちに意識を失ったと思います。手術室内の光景は天井が思ったより高かったことと自分の顔のレントゲン写真が壁面のデカいモニタに表示されてたこと以外覚えてないです。

次に気づいたとき、すでに手術は終わっていました。手術中に麻酔醒めなくてよかった。

手術室から出てきた時に私の体に繋がっていたものはおそらくこうです。

  • 酸素マスク
  • 鼻管(鼻から胃へ挿入されたもの)
  • 尿管
  • 下顎ドレーン(術部の出血や滲出液を吸い出すための管)
  • 心電図モニタ
  • 左手の甲に点滴針

酸素マスクは麻酔を完全に醒ますために付けられていました。口、というか歯が閉じていることもあり一生懸命鼻から吸わないと息苦しくなる感覚があって苦痛でした。

このへん時間感覚と記憶が怪しいのですがおそらく日付が変わる前に先生が見に来て手術が予定通り終わったとの説明があり、鼻管の長さを調整して内部の金属線を抜き(挿管が容易になるように入れられていたものと思われる)、それから移動式のレントゲン装置がきて胸部のレントゲンを寝たまま撮りました。

おそらく日付が変わる前だと思うのですが、麻酔が完全に醒めたことが確認され酸素マスクが外れると呼吸がだいぶ楽になり、また水を飲んでもよいと言われたので看護師さんに手伝ってもらいながら飲みました。これは鼻ではなく口からです。口の横から水飲み*3を使って吸うように飲みました。このときの水はとてもおいしかったので「お水おいしいです」と漏らしてしまいました。

手術に立ち合ってくれた親から後で聞いたのですが、手術室に入ってから出るまでは3時間ほどだったということです。

入院3日目(8日目)

苦しくて結局手術後からずっと眠れませんでした。水を飲んで頑張りました。術部がずきずきと傷んできたので痛いと言ったら痛み止めの点滴を入れてもらえましたがあまり効きませんでした。あとは暑かったので水枕をもらいました。しばらく耐えたら外が明るくなって朝になりましたが、たくさん付いた管(この時点では何の管がどこに付いているのか把握しきれていない)に障るのが怖くて体勢を変えられず、首と腰と足が痛くて、特に足は血栓防止用のきついストッキングを手術直前から履いていたので、これの締め付けがきつくてかかとが壊れそうでした。

朝になって看護師さんが端末を渡してくれたので早速つぶやきました。

あとはインカメを使って顔をみたら左の頬が腫れて膨れてました。それはそう。

10:00ぐらいに尿管を抜いてもらい、心電図モニタも外れてようやくベッドから解放されました。自由に歩き回って勝手にトイレに行けるようになったということです。尿管を抜く瞬間は痛かったしその後排尿痛もありましたがしばらくしたら消えました。

この日の昼から栄養と痛み止めを鼻から入れることになりました。最初は看護師さんにやり方をレクチャーしてもらうんですが、その後は自分でやるように言われました。栄養は点滴で使うスタンドに吊り下げたパックを鼻から出ている管に接続することで入れます。たぶん点滴と同じ構造だと思います。クリーム色の粘性のある液体で甘い香りがほのかにしましたが、胃に直接落ちてしまうため味は感じません。喉や食道を通過するときにチューブ越しにひんやりしたものが流れていく独特の感覚があります。げっぷは普通に出ます。3食これです。

痛み止めですが、錠剤を砕いて粉にしてもらったものを水に溶かしてシリンダーを用いて例のごとく鼻から入れます。これも入れるときはひんやりした感覚があります。

使用したのはロキソプロフェンなのですが点滴より遥かに効きがよく、これを入れるとほとんど無痛となりました。市販薬でいうところのロキソニンです。最短6時間は開けて服用するよう指示されましたが効き目が6時間は持たないぐらいなので、効き目が切れてから次の服用分が効き始める1時間ぐらいは痛みに耐えなければなりませんでした。

それから朝晩は点滴を入れてもらいます。生理食塩水で希釈した抗生物質です。これは退院日の朝まで続きました。

入院4・5日目(9・10日目)

投薬、食事は3日目の午前と同じです。痛みが若干ひいてきて余裕が出てきてます。

人生でこんなに長く入浴しなかったことはいままでなかったので耐えられなくなってきました。

入院6日目(11日目)

この日の朝、顎のドレーンを取ってもらいました。ドレーンは術部の下の方に挿したチューブで、反対側はリザーバ*4と呼ばれるゴム製のボトルに繋がっています。リザーバはへこんだ状態でチューブに接続されており、ゴムの復元力によってチューブ内部から液体を吸引する働きを持ちます。これにより術部で発生した血液や滲出液は溜まることなくリザーバへ排出され、傷の治りが早くなるなどの効果があるそうです。毎朝の検温時に看護師さんにリザーバに溜まった液の量は確認してもらっていて、もし溜まっているようだったら液量を測った上で捨てる処理を行ってもらっていました。量や色から治癒状態を知ることができるようです。素人目には血の色の液体が溜まってんなあぐらいにしか思えませんでした。 リザーバは顎に繋がっているので自分が移動するときは常に持ち歩かなければなりません。首から下げた袋に入れて携帯するのですが100mlぐらいの容量があるので結構邪魔でこれが外れることでかなり快適となりました。

あとはこのへんから唇が痛くて嫌になってきました。歯の固定具と唇の内側が擦れて唇が痛みました。顎が開く時、唇と歯はほとんど連動して動きますが歯が閉じられた状態で発話しようなどとすると唇は歯から独立に動こうとするので唇が擦れることになります。

入院7日目(12日目)

この日の朝食から流動食を食べるようになりました。鼻ではなく口からです。歯はまだ固定されているのでストローで吸って歯の隙間から飲む感じです。粘性はありましたが飲み物を飲んでるようなものでした。でも味がするのでおいしい。吸う時に唇が歯の固定具に当たるのでとても痛い。

口から栄養がとれるようになったということで鼻の管を抜きました。これがこの日の午後だったと思います。鼻の管は割と勢い良く抜かれたのでその瞬間は痛かったです。抜いたあとはすばらしい開放感。これで体内に挿していた管がすべて抜けました。

入院8日目(13日目)

このころになると腫れがだいぶひいてきて、痛み止めを飲まなくても痛みを感じなくなってきました。 食事は3食流動食なんですが流動食はカロリーがなくてお腹がすきました。Twitterで飯テロしてきた各位は反省してください。

経管栄養よりカロリー低いのやばない?

あと手術後初めてシャワーを浴びました。めっちゃよかったまぞく。

入院9日目(14日目)

午前、ついに顎間固定を外してもらえました。昼から流動食でなくきざみ食が供食されました。

噛んでものが食える、口開けてあくびができる、歯磨きできる。

噛み合わせ等問題なかったのですが上下の歯茎に取り付けられていた固定具は付けたままになりました。固定具間を縛っていたワイヤーのみを取り外して顎間固定解除となりました。この意図は正直よくわかっていません。

筋肉が衰えているのかまだ炎症が完全には収まっていないのかわかりませんが、口を大きく開けようとすると痛いので小さくしか開きません。でも噛めるので大抵のものは食べられると思う。

入院10日目(15日目)(退院日)

この日の午前の診察をもって退院となりました。顔の腫れはほとんど無いです。口内の固定具は付けたままです。まだ唇の痛みは継続しそうです。なお抗生剤点滴はこの日の朝まで継続し、終了後点滴針を抜きました。

入院のその他感想など

  • 入院生活は退屈しませんでした。パソコンなくてもいろいろできることはあるんだなあと思った。まあほとんどの時間Twitterしてたような気がしますが。
  • 手術日の午前中にまだ消化していなかったウマ娘2期の最終3話を見ました。泣いた。
  • 手術後の暇な時間はこれまた未消化のひぐらし業を見て過ごそうと思っていたのですが手術後は鼻管の余った部分を耳たぶに固定した関係でヘッドホンおよびイヤホンが耳に付けられなくなってしまって視聴を諦めました。
  • 積んでいたまちカドまぞくを6巻を崩すべく、1〜5巻と合わせて持っていきました。6巻やばいっすね。
  • 同室のおじさんのいびきがうるさかった。あと天井が光って落ち着かないので消灯(21:30)後はテレビ付けるのやめてくれ

おわり

コロナでクソ忙しいであろう中自転車でコケたバカを救ってくれた医療体制にはとても感謝しています。看護師のみなさんの看護も献身的で感動しました。 人生で初めての入院と手術でしたが手術怖くなくなったかもしれない。今後1年程度でプレートを外すために再度手術する未来が決まっているのですがそのときの入院は3・4日程度で今回よりは短くなるという話を聞いています。

書いてて思ったけどこれほとんどTweetのまとめじゃん…

ここがわからんとかもうちょっと詳しく書けとかあればコメントかTwitter*5にください。DMは解放されてます。

*1:ポカリみたいなもんだと思って飲んだらまずかった https://www.os-1.jp

*2:OS-1よりおいしい https://www.nestlehealthscience.jp/brands/arginaid/arginaid

*3:こういうツールがあることは知らなかった https://kowa-seisakusho.co.jp/tacaof/products/category/product/?id=332

*4:参考画像 ここのバルブ型とかいうやつ https://www.atomvetme.com/?p=17348

*5:https://twitter.com/ul0829